完璧さが面白さに繋がるとは限らない

2011年07月05日 14:54

休憩中にダラダラ読んでた『サクラダリセット』を読み終えた。
意外とアッサリ読めたので、時間はあまりかからなかったのが意外。

で、一言でいうなら「完璧な構成の作品」だったと思う。
キャラの配置、セリフ回し、行動動機、原因と結果など、
完成することが定められたパズルのような美しい小説だったと思う。

でも、あんまり読んでて「楽しい」と思わなかった。

以前、同じ角川スニーカーの『シュガーダーク』の感想で、
私は同じように「これは完璧な作品だ」と評した。
しかし、ここで言う「完璧」と、『シュガーダーク』の「完璧」は別物なのだ。

どう違うのかというと、『サクラダリセット』はただ完璧である「だけ」であること。
読み手に「計算して書いてるなぁ」と思わせてしまう雰囲気が残っており、
それが本来、感情に訴えかけるべき「物語」として、重大な欠落を生んでいる。

…とまぁ、なんかそれらしいことを書いてはみたけれど、
単純に言って、私はこの主人公が気に入らないだけなのだろう。

主人公とは読者が感情移入するいわば分身のようなもので、
読書に集中していると、主人公の感情に読み手の気持ちも引き摺られることがある。

そこで大切なのは、主人公には「情熱的な部分」が必要である、ということ。
読み手が主人公の気持ちとシンクロするならば、
物語を盛り上げる意味でも、主人公には「熱」を持たせるべき、というのが持論である。

ところが、この作品の主人公は実に淡々と冷静に物静かに全てを実行する男で、
実際には心に秘めた譲れない何かを持つのは理解できるのだけど、
とにかく粛々と物事が進行する物語なだけに、その「熱」に触れる余地がないのだ。
結果、作品を見る目自体が冷え冷えとしたものになり、
キャラクターのセリフを借りるなら「どうでもいい」感じになってしまう。

ちなみにこの「どうでもいい」はヒロインの心の基本形。
多分、このヒロインを可愛いと思えないのも原因なんだろうなぁ。
一途というか盲目になりすぎてて共感できない。
多分、巻が進むと印象も変わるのかもだけど、1巻だけ見た分では、
あまりに人間味が薄すぎて好感を抱くに抱けない。

このヒロインの最大の欠点は、
小説という媒体ゆえに内部の心情が読者に見えてしまう点。
こういう無感動無表情系のキャラは、
内部に何を抱えているのか分からないからこそ魅力が出るのだと思うのだけど、
小説という形式の弊害で、心の動きが丸分かりになっているのだ。

狙いとしては、無感動キャラなのに、
主人公に対しては普通の女の子のような感情の動きを見せる辺りに、
キャラクターとしての可愛さを出したいのだろう。
しかしそれ以上に、主人公以外に対する極度の無感動さの方が強調されてしまい、
可愛いと思う前に「なんだコイツ」という印象が先行してしまう。

そのため、実に美しいロジックで構築された物語だなぁとは客観的に思えるのだけど、
感情移入が全然できないせいで、どこか「他人事」としか受け取れない。
私は物語に没入することが好きなのであり、構造を把握したいわけではない。
それが『サクラダリセット』と『シュガーダーク』の決定的差なのだと思う。
私にとっては。

あと、登場人物が軒並み中二病患者というのも微妙。
まぁ、特殊能力なんて持ったら誰でも中二病に罹患するのかもしれないけど、
だからといって「世界で一番優しい言葉について話そう」というフレーズは出ない。
もう、とにかく主人公の言動が芝居がかって中二病まっしぐらで、
ヒロインもそれをむしろ普通と受け止めちゃってて、
バカな友人ポジションのヤツも地味に喋りがインテリじみてて、
ようするに、全てが気取ってるというか、キザったらしい物語なのだ。
中二病そのものは嫌いじゃないのだが(むしろ好物)、
気取った雰囲気が嫌いなのかもしれない。
中二病は熱くてバカな方がいい。

既に5~6巻出てる作品だから、
1巻では語られなかった主人公の過去については既に明らかになっていると思うのだが、
もし主人公の過去の謎というのが、
「好きな子に告白してフラれた時のためにリセットという保険を掛けていた」だったら、
ちょっと好感が持てる。
更に「フラれたけど、とりあえずキスしてからリセットしようとした」だったら、
全巻揃えてもいい。
結果、リセット後にこの女の子が死んでトラウマになったとかなら神。
スケベ心が原因で好きな人を失ったとか、最低すぎて最高にリアルだ。
ようするに「汚い部分」が見たいのですよ。この主人公、綺麗すぎるんだもの。
思春期の男だったらエロいことに能力使うだろ、普通(ぇー

決してつまらないわけではないし、物語として完璧な作りになっているとも思う。
けど、夢中で先を読ませる力にはなっていない。
完璧さと作品の面白さはイコールではないということだろうか。
導入が「猫探し」と、比較的どうでもいい事件なのも原因かもしれない。

むしろ重要なのはキャラクターに魅力を与えることだろう。
それは特徴を出すという意味ではなくて、共感できるキャラ、ということ。
その点において、この作品は(少なくとも私にとって)完全に失敗していた。
だからこそ「適度に面白くて先が気にならない本」という印象が生まれたに違いない。
別にこの主人公たちがどうなろうと、どうでもいいのである。
そんな登場人物たちが織り成す物語もまた、同様なのだ。

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