PSP「デッドエンド Orchestral Manoeuvres in the Dead End」総評

2011年11月08日 19:11

てなわけで、せっかく色紙も当たったんで、レビュー書いておきますね。


【クリア時間:12時間  個人評価:8  一般評価:7】


ゲームブックをデジタルでやっちゃおうという「デジタライズド・ゲームブック」、
それが「デッドエンド」です。
ちなみに、ゲームブックそのものを知らない人は全力で置いてけぼりにするんで、
ググってからまたどうぞ(おひ

見た目は普通のテキストADVながら、
その文体がゲームブック独特のノリになっているため、
通常のテキストADVとは違う雰囲気がある。
また、往年のゲームブックファンであれば、
どこか心地よい懐かしさを感じるかもしれない。
「14番」という数字に反応できる人はニヤリとすること請け合いである。

ストーリーは、吸血鬼とその敵対組織との争いに巻き込まれた主人公が、
なし崩し的に吸血鬼退治をすることになるというラノベ的なもの。
設定は全体的に重いのだが、ノリは意外と軽いので、サラリとプレイできるかと。
まぁ、即死することも多いんだけど。まさにデッドエンド。

一番の特徴は、アナログのゲームブックでできたことは基本的に全部できること。
例えば、判定はダイスを振った出目で決めるのだが、
この出目を無視することができる(判定そのものをすっ飛ばせる)。
また、進行用に示されたパラグラフ(通し番号。本のページの様なもの)を、
順番に巡る必要がない(好きな時に好きな場所を見れる)。
同じパラグラフで足踏みすることでアイテムの無限増殖ができる、など。

いわゆる「ズル」、今で言うところのチートが、
このゲームでは基本システムとして組み込まれている。
これはゲームブックを遊んだことのある人なら、一度はやったことがあるだろう。
もちろん、ズルをしないで正当に遊ぶのも君の自由だ。

このシステムの利点は、リトライが簡単なこと。
例えば、理不尽なトラップに引っかかりゲームオーバーになっても、
すぐにひとつ手前の地点に戻り、別の道に進むことができる。
これは常にクイックセーブしているようなもので、
ゲームオーバーになりやすいゲームでありながら、煩わしさが一切ない。
もちろん、素直に最初からやり直してもいい。全てはプレイヤー次第だ。

で、このゲームは「ゲームブック」なので、他のテキストADVとは一味違う。

まず、ダンジョンがある。
通常、探索などをすることもないまま、情景描写だけで流されそうな部分が、
きちんと探索をしなくては目的地に辿り着けないようになっている。
そのため、いちいち背景の描写が細かい。
「ここは6×8メートルの部屋で、長いテーブルの上には料理がある」といった風に、
その部屋の特徴は一部屋ごとにしっかりと描写される。
この辺はTRPGでも遊んでいるようで面白い。

また、現在地を把握しやすいように、マップが視覚情報として表示されている。
これも通常のテキストADVではお目にかかれない代物だ。
現在地や周囲の構造を一目で理解できる上に、探索している雰囲気が出て良い。
プレイ感覚としてはRPGのようでもある。
まぁ、最初に能力値をダイスで決めたりするのであるが。

RPGのようだと書いた通り、このゲームでは戦闘がある。
それもコマンドを選び、ダイスで成否を決める、それなりに本格的なものだ。
本来、ダイスを振る部分は省略されているのがコンピューターゲームなのだが、
それを敢えて視覚化することで、味気ない戦闘に彩が生まれる不思議。
攻撃演出がカッコいいことと、戦闘自体は結構ガチなこともあり、
なかなかの緊張感が味わえる。

本当にゲームブックをデジタルに落とし込んだような仕様に舌を巻く。
これは面白い試みだと思う。

登場人物に嫌味がなく、好感が持てるため、
キャラクターの過去を背景とした物語に興味が生まれ、
結果、ストーリーが面白くなる良い循環がある。
実際、シナリオとしてはなかなか優良。
ラストのどんでん返しは思わずニヤニヤしてしまったことよ。

「吸血鬼」というものについての独自解釈というか、
生態解説のようなものが作中でされるのだけど、これがまた興味深い。
「何で敵は1人だけで攻めてくるのか?」とか、
「何で世界は吸血鬼の支配下におかれていないのか?」といった、
様々な作品において、お約束や理不尽さで無理やり納得させられている部分を、
実に綺麗に説明していると思うので、ここはちょっと見て欲しい部分である。

音楽がちと残念なくらいで、個人的には良いゲームだと思う。
ゲームブックならではの、パラグラフを利用した謎掛けやトラップも面白い。
ちなみに、謎解きに正解すると、
「正解だ。ここは~の結果来ることになるパラグラフだ」
としっかり教えてくれるので、
いきなり訳の分からないパラグラフに間違えて飛ぶことも少ないはずだ。
親切設計。

自由にパラグラフを移動できる上に、行った場所がリスト化されているので、
コンプリートも非常に簡単。
適当にパラグラフ移動していると、
「ここは隔絶されたパラグラフだ。コンプリートを目指して来たのか?」などと、
なかなかメタなことを言われたりもする。

クリアすると、ズルが使えない無限ダンジョンモードと、
CG&音楽視聴モードが開放される。
まぁ、無限ダンジョンはあくまでおまけなので、あまり期待しない方がいい。
仕組みが分かるとゲームオーバーになる方が難しくて、永遠に潜り続けられるのだ。
それでいて中断不可なのが厳しすぎる。
せめてレベルアップやアイテム収集の楽しみでもあればよかったのに…。

あと、本編での不満も少し。
途中の中ボスを倒すと取得できる必殺技が強すぎて、
後半はそればかり使うことになってしまい、戦闘の楽しみが激減してしまうこと。
むしろ、あの中ボス戦がラストバトルに近い厳しさで超楽しかっただけに惜しい。

基本的に一本道な点も残念。
道中は色々な道があるとはいえマルチエンドではないため、一度クリアしてしまうと、
あとはパラグラフコンプリートくらいしかやることがなくなってしまう。
サブエピソードは色々あるが、普通にプレイしていれば、
クリアまでに一通り見てしまうことになるだろう。
せっかくデジタルのゲームブックなのだから、
そんなところまでアナログのゲームブックと同じにしなくてもよかったのではないか?

ダンジョン探索を面倒に感じる人もいそうだ。
物語を追いたいだけの人にとっては、
雑魚との戦闘やダンジョン探索を煩わしく思う人もいそうである。
実際、ラストダンジョンはかなり広い。広すぎる。
まぁ、そういう人は普通のテキストADVでもやればいいんじゃないかな。

そんなわけで、試みとしては面白いし、かなり上手く機能もしているけど、
シナリオの構成に広がりが出せたらもっといいなと思うので、点数は少し抑え目。
次回作に期待したいけど…売れたのかなぁ、コレ(´・ω・`)

本当にキャラクターが凄くいい味出してるんで、
もう少しボリュームがあって、各キャラの後日談とかも見れたら素敵だったのになぁ。
特に阿久津とグレーテのカプは薄い本を探したくなる勢いですよ?(ぉ

個人的には大好きなゲームなんで、もう少し評価されてもいいんじゃないかな。
ゲームブックが好きな人なら、きっと楽しめると思うよ。
ダイスを振る感触が楽しいのです。
ちょっと変わったテキストADVをやってみたい人も、是非是非。

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