主人公を上手に負けさせること

2015年05月10日 17:41

アニメ版『食戟のソーマ』と『なのはViVid』が面白すぎて、
思わず原作を読み直して1日が潰れた休日。
これは勿体なかったんだろうか…や、楽しかったならヨシ。

両作とも非常に面白かったんですが、ちょっと気になることがありまして。
それは、「主人公を負けさせる」ことについて。
かなり昔に、ここでも少し考察したことがあった気がしますが、改めて。
というか、それも『なのはViVid』の時だった気がするw
やっぱり、あそこでヴィヴィオが負けるのは衝撃だったんですよねー。

漫画でも小説でもいいですが、「物語」である限り、主人公が中心となって話は進みます。
となると、主人公を途中でリタイアさせることは物語の停滞、最悪、終了になってしまいます。
かといって、主人公がなんでもかんでも無敵で常勝といのもつまらないですよね。
となると、読者に緊張感を持たせるためには、適度に主人公を負けさせる必要があります。

作品によって、「負け」の難易度は大きく変わります。
例えば、スポーツや競技系の作品ならば、負けることは新たな成長に繋がるので、
むしろ最初はどんどん負ける展開でも問題ありません。つーか、最近だと負ける展開多いよね。

しかし、戦いがメインとなる作品となると話は別で、
負けることで致命的な状況に陥ることもあるし、最悪、死亡する可能性もあります。
なので、作者はいかに「最悪の事態は回避しつつピンチを演出するか」で頭を悩ませるわけです。
「そんなもん知るか!」と思考停止した作品がチートや無双主人公系ですね。
これらは爽快感重視でストレスなく読める方向に特化する代わりに、
物語そのものの展開に工夫がないと、起伏のない平坦でつまらない作品になるため、
この系統で本当に面白い作品を生み出すのは、普通より難しかったりするわけですが、
それについてはまた別に機会に。
要するに、主人公を「負けさせる」ことは、非常にハードルの高いことなわけです。

で、今回思う所があったのは、『食戟のソーマ』です。

基本的に最初から高レベル主人公なので、無双系作品でありながら、
更に高レベルな敵を登場させるインフレ展開を、「料理」という題材に落としこむことで、
上手くインフレを回避したなぁと思う作品です。
言ってみれば、主人公は総合レベルは高いけど、
個々の個別スキルのレベルは高くないというキャラ設定にしたRPGであり、
敵側は個別スキルにおいてのスペシャリストを用意することで、
主人公以上の力を持つ強敵感を演出することに成功しているわけです。
それでいて、敵側の総合レベルそのものは据え置きにすることで、
強さのインフレを抑えることにも成功しています。
例えるなら、学年や年齢毎にレベルキャップが設けられてるようなイメージでしょうか?
もちろん、レベルキャップ内でも、上限に達してるキャラといないキャラも存在します。
その上で、各スキルレベルの高低による個性化がされてるわけですね。
どちらかといえば『ドラゴンボール』よりも『HUNTERXHUNTER』系と言えます。

更に言えば、『ソーマ』は命のやりとりがない、ある種スポーツ的作品なので、
適度に負けさせることも可能です。
これは設定の時点で勝利は決まったようなものですね。
あとは作画(こちらも大勝利)と構成の巧みさ(こっちも素晴らしい!)の問題であり、
それらもクリアしてることが、高評価の理由なのでしょう。

しかし、対美作戦はいただけません。
この話自体は面白かったし、勝利の理由付けにも文句はありませんが、
この勝負に関しては「主人公の勝ちが確定していた」ことに問題があります。

それは「負けたら料理人をやめる」という決闘条件が理由です。

単純に、負けた時点で作品終了になる条件が提示された時点で、
メタ的な話になりますが、主人公に負けはありえません。
まぁ、勝ち負けよりも「いかに勝たせるか」が重要だと思えば、
こんな先読みに意味はないんですが、
それでも、勝つか負けるか分からないギリギリの緊張感は失われてしまいます。
つまり、「強すぎる理由付け」がマイナスに働いた例なんですね。

例えば、四宮戦は素晴らしいバトルでした。
四宮シェフは作中でも1・2を争う強者であり、勝てる要素はほぼありませんでした。
それでいて負けたら絶望的な展開になる状況という、本当に先が見えない内容であり、
実際に負けるという更にドッキリな展開で驚きを与えてくれました。

しかし、美作はそれほど格上な相手ではなく、それでいて敗北条件が大きすぎたため、
逆に主人公側が負ける要素が思い浮かびませんでした。
四宮戦ほどのドキドキ感およびギリギリ感を演出できなかったわけです。

「敗北することで主人公が窮地に陥りすぎて作品が成り立たなくなる」という状況が、
逆に主人公の敗北を読者に意識させない方向に働いてしまうというのは、
世の中に物語が溢れすぎた結果なのだと思います。
「お約束」が読者の側に刻まれてしまっている弊害とも言います。
「フラグが見える」と言い換えてもいいですね。

とはいえ、無難な条件で負けても盛り上がらないし、難しいところだとは思います。
明らかに格上相手にご都合で勝利しても醒めてしまいますし、
バランス調整というのは本当に難しいところですが、
『ソーマ』においては四宮戦のような神展開も見てますし、期待してしまいますよね。

明らかに「大きすぎる発言」は、相手の格によって意味が変わるということを、
この美作戦で痛感した次第です。
先読みやネタバレを防ぐためには、物語を盛り上げる演出だけでなく、
キャラクター感のパワーバランスにも気を配る必要があるということですね。

まぁこれも連載が続いてる人気作ならではの宿命でもあるので、
あまり難しく考えずに楽しむのが一番ですがー。
休日潰して読み直す力があるだけに、『ソーマ』は本当に面白いぜ!

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