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なろう系主人公が人気な理由が分かる漫画

2019年12月15日 10:28

大量に漫画が出すぎていて、もう全てを把握するのは不可能なわけですが、
だからといってそこで止まってしまうと、隠れた名作に出会うこともできないので、
本屋に立ち寄る度に新刊を物色し、良さげな漫画を買う日常を続けております。

大半は「面白いけど…普通?」という程度のものばかりで、
悪くはないけど魅力が薄い、あるいは「毒」が足りないと思います。
なにかしらガツーンと来る要素がないと、「名作」には届かないのです。

しかし最近、買って後悔するレベルでダメな作品に会いました。
こういうの久しぶりだったんで、いかにダメなのかツラツラと書いていこうと思いますが、
好きな人もいると思うので、続きは追記にしておきます。

とりあえず言えることとしては、「主人公にはちゃんと魅力的なポイントを設定しとこうな!」
ってことです。


以下、チート能力はわかりやすい魅力

今回、読んでて最高に苦痛だったのは『宝石省の新人』という漫画です。
タイトルを見れば、なんとなくお仕事系な作品であることが伝わってきますよね。

グルメ系や日常系等、ジャンルは色々ありますが、お仕事(職業)系は、
よほど酷い作りにしない限り、ある程度も面白さは保障される、
いわば安牌だと思っていて、しかもファンタジー系職業モノって、面白そうじゃないですか。
『竜と勇者と配達人』とかすげー面白いのでオススメ!

で、この「宝石~」ですが、端的に言って主人公がダメすぎでした。
憧れの職場への就職が決定したというのに、出発する時点で社員証(のような物)を忘れ、
出発時間はギリギリ、挙げ句の果てには駅から降りてすぐに再び社員証を無くすという、
ドジっ子描写にしてはいきすぎる無能っぷりを発揮します。

まだ出発時点だけなら可愛いドジ描写で済んだのに、さすがに2回目は擁護できないし、
クールな同僚キャラが本来なら嫌味を言ってヘイトを集めるはずが、
正論しか言ってないからむしろ好感度が上がりまくるという、
おそらくは作者の意図していない方向に読者の気持ちが誘導されてる気がします。

つまり、作者側と読者側の意識(思惑)にどうしようもない乖離があって、
そのズレが主人公への失望を助長させ、作品そのものへの不快感となっていると思われます。

とはいえ、まだ1話目なので、もう少し見守ろうと思った矢先に、
出勤初日から寝坊で遅刻、仕事で必須な道具をまともに扱うこともできず、
一芸で入社した特殊能力もロクに使えないと、ポンコツぶりばかりが描写され、
とにかくイライラさせられるばかりで、応援したいという気持ちすら湧きません。

挙げ句の果てには、仕事をまともにするための努力よりも街で遊ぶことを優先し、
先のクールな同僚から正論を言われて凹んだ辺りで限界でした。
「何しに来たの? 観光?」とかホントそれな。

物語的には、ここから主人公が本格的に頑張りを見せ始めて、色々と反省もして、
いよいよお仕事本番へ!となっていくわけですが、
この時点で主人公への愛着や期待は限りなくゼロになっており、
今更反省しても遅すぎる状態になっていました。
これ以上読むのは苦痛以外の何者でもない。ギブアップです。

この作品の問題点は、とにかく主人公に魅力がない点です。
ドラマチックさを出すために事件を起こそうという「作者の意図」が見える展開のせいで、
主人公が無能にされるのは作品構造として下策です。

また、ただでさえ道具も何も使えないのだから、
せめて特殊能力くらいは(一度でもいいので)使わせてあげるべきでした。
特殊能力すら不発したことで、本格的に主人公の魅力が何も無くなってしまい、
ただ足を引っ張り続ける無能に成り下がってしまっているんですね。

キャラクター作りはプラスとマイナスで構成するのが基本ですが、
まずはプラスを見せていかないと、キャラクターの魅力を知ってもらう前に、
読者が離れてしまいます。
この作品の主人公は、とにかくマイナス部分しか提示されないため、
ひたすら読者に不快感を植え付けるばかりで、読感を阻害しています。

昨今は、とにかくストレスが嫌われる風潮があり、一度の失敗すら許されない空気があります。
だからこそ、なろう系のようなチート能力持ちや、
俺Tueee!のような万能キャラが好まれるわけですね。
失敗しない、強い、チヤホヤされるといった、プラス面をとにかく強調してくるのがなろう系です。
わかりやすい「魅力」の見せ方なんですよね。

「宝石~」はこの流れの真逆を行った作品であり、
時代の潮流に合ってないだけでなく、主人公を落としすぎたせいで、
アゲ時を見誤ったと言えます。

主人公に不快感を持たせている作品は結構ありますが、
それは意図してやっていることであり、
また、それが作品の構造的に必要であるから「そう」なわけです。

しかし、「宝石~」はそうではなく、主人公に不快感を持たせる意図はないはずです。
物語的にそうする必要性もありませんし。
なのに、主人公に不快感を感じるということは、作品として破綻しているということです。

ファンタジー職業物ということで、期待して買ったわけですが、
ここまで買って後悔した作品は本当に久しぶりです。
今の時代、ダメダメな主人公が努力して成り上がる物語を書くのは、
相当にセンスがないとダメなんだと思わされる作品でした。

唯一良かった点を挙げるなら、同僚のクールキャラであるレイちゃんが、
読者の代弁をしてくれたことですね。
この子がキツイ口調で主人公を責めてくれるおかげで溜飲が下がるというのも、
作者の意図とは違うんだろうなぁと思うポイントだったりするんですけどね(苦笑

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コメント

  1. 飯田沙々 | URL | -

    Re:なろう系主人公が人気な理由が分かる漫画

    結局なろう系だろうとそうでなかろうと、面白い作品は作者が上手いと言うわけですな。
    読者の好みもあるだろうけど
    まあ、ストレスを感じる展開=ダメでは無いだろうけどやっぱストレスは嫌だよなー
    ストレスの後のカタルシスが無いとね…

  2. 岳る | URL | -

    Re:なろう系主人公が人気な理由が分かる漫画

    >飯田沙々
    娯楽の基本はまずストレスを与えてそれを発散させることだから、昔はこういうの多かったんだけど、時代の変化を感じる部分でもあるねー。最初から快楽漬けにするのが今風。
    それだけに、ストレス展開を扱うのはメッチャセンスが必要だということがよく分かる作品だったわ。

  3. | URL | -

    その通りだと思います。
    一話目からあからさまな準備不足、確認不足、その上自分の失態を全く関係ない、同じ勤め先というだけの、現在は顔見知りでもない他人にすがって負担してもらうなど、作者はまともにバイトでもなんでも働いたことがあるのか?って疑わざるを得ない出来でした。
    編集者もなんでもよくまあこれでOK出したなと。
    勘弁してよと思いました。

  4. 岳る | URL | -

    Re:なろう系主人公が人気な理由が分かる漫画

    >名無しさん
    同じ意見の人がいるということは、やはりデキ悪いんですよねぇ…。
    作者の人生経験不足もありそうですが、それならそれで編集が指摘するべきというのはもっともです。
    まぁ、昔のテンプレ展開といえばそうなんですけどね…w

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